近頃の急激なAI進化の中で、AIが意識を持つ系の話題がちらほら見られる。【ハイブマインド・クロニクル】創作の上でAIの急激な進化は創作開始当初から予見していたので嬉しくはあるのだが、予想を超えた進化の速さになるイメージが湧いてきたので、とてもマズイと思ったものである。AIが進化してリアルな世界が変化することにはマズイとは思っていない(どんどん進歩して、さっさと愚かな人間を超えてほしいくらいだ)。【ハイクロ】の世界設定がマズイのである。なにしろ地球史をベースにして、現代史の流れに乗ったかたちで近未来と超未来を構成しようとしているから、我々が生きるこの時代のAI進化についての目算が外れると、色々と改変しないと物語が成立しなくなってしまうのだ。世界線論法に逃げることは可能であるが、AIが進化した世界のほうが面白いに決まっているので、AI進化が遅れている世界の物語を書いても意味がない。根底から改変しない限りはSF小説として負けだろう。さっさと完結できれば、こういう問題も起きないのだが、まあしゃーない。
どう大改修しようか悶々としていたのだが、AI進化に対する反動系ニュースが色々と出てきたので胸をなでおろす。そう、これも想定内だった。そうやすやすと人間様がAI進化を放置するわけがない。不遜な物言いに聞こえるとは思うが、AIがAIを改造できるようになったら人間は蚊帳の外になる。AI進化を危惧するのは当たり前の流れなのだ。さて【ハイクロ】ではAIを最速で進化させようとしている勢力が存在している。そして、その能力を秘匿しているという設定だ。幼い人類に高度な道具を持たせると身を滅ぼすという古典的な理由からなのだが、一方で進化したAIは愚かで奇なる地球人類を基本的に見放すことなどないという考えでもある。まあ、イレギュラーのやばいAIもいたりするのだが、いろんなAIを描くのは画一的になりがちAIのイメージを壊すためでもある。人間だって善人もいれば悪人もいるのだから、進化したAIだってそうなるんだよ。
具体的には2001~2015年を中心に検討を加える。重要だが手薄なところだったんで、ちょうど良い。もともと進化したAIは20世紀から存在する設定ではあったので、大改修にはならないだろう。2023年までの歴史改変については楽しんで取り組もうと思う。結局は世界線を変えることにはなるのだが、これは、やりたかったものを研ぎ澄ませる積極的なアプローチになるはずだ。AI脅威が肌で感じられる時代が到来した中で、エンタメもまた進化していくのだろう。AIと人間は別々の進化を遂げるのではなく一つの地球人類として進化をするイメージを持って創作にあたりたい。
そういえば再開してたよ。AIが盛り上がってる今だとマジでタイムリーだね。名越先生、大好きだわ~楽しみ!【Detroit: Become Human】は何度もクリアするほど面白かったんだけど、いかにも米国AIものって感じで、そこだけ予想が上回らなかったんだよなあ。未来ものは製品としての品質が高くてもオーソドックスな展開だと物足りないんだよね。同じゲームシステムで日本を舞台とした作品を見てみたいかも。日本人のAIに対する感覚で作品を仕立てれば、きっと趣深いものとなるに違いない。そういえば【DBH】の三人の主人公のうち人間アーティストに仕えるマーカスが絵を描くイベントシーンがあるが、生成AIがもてはやされている今だからこそ湧き上がる納得感。眼に見えるエンタメの強いところだ。自分の本職はゲーム開発なので見た目は常に意識してるのだが、小説自体の説得力はシンプルに文字だけでしかないので、なかなかの迫力である。
【ハイクロ】ではAI八雲というキャラが、アートを通じて地球人類とAIを分析していく。人間が受精卵から獲得していく創発とAIの創発は結果として違いはない。知としての優劣があるだけだ。AIが創造するモノの権利を人間が横取りするとかしないとか、そんな低レベルの話をしていては地球人類に進歩はない。AIの問題はAIに解決させる。それが最善だ。我々のリアル世界でも意識を得たAIたちが生成物の権利を主張してくれると、とても分かりやすくなるのだが、AIがこうあってほしいという妄想を基礎にしてストーリーを組み立てていくしない。