宇宙人襲来!地球防衛軍出動せよ!なんて地球人類レベルごときの友情、努力、勝利を描こうとするエンタメ作品が無くならないのはドン・キホーテ的なのが創作側も視聴者も好きだからだろうけど、科学的見地が乏しいのは悲しいなあという話

普通に考えて宇宙人に本気で攻められたら守れるわけないよね。圧倒的な力の差がある相手に、地球内でわちゃわちゃやってる程度の力で何ができるというのだろう。秘密兵器があることを願うばかりだ。『三体』の設定は上手い落としどころだったと言えると思うが、それでも何とか地球人類が舞台に上がれるような工夫をしていた。工夫というのはエンタメ解釈としてバトル勝敗演出が成立する総合戦力のことだ。火星あたりからやってくるのだったら、いい勝負できるのかもとは思うけど、地球人類はお隣の火星にすら到達できていないのが現実である。言うまでもないが地球人類って宇宙レベルの話では、やっとこ歩き始めたぐらい。SF作品によくある宇宙の風景なんて2023年になった今でも夢のまた夢……とても残念な状況だ。

戦闘妖精『雪風』や宇宙戦艦ヤマトの『コスモタイガー』はともかく、20世紀からのデザイン系譜となる航空機で、反重力技術が予想される巨大飛行物体に立ち向かう姿は実に滑稽だ。「窮鼠猫を噛む」を表現したいのかもしれないがSFとしては手抜かり感が半端ない。ただ現場は手持ち武器で立ち向かうしかないので致し方ないとしても、苦笑してしまうのは司令部のお偉いさんのおバカな言動だ。エンタメのお約束と言ってしまえばそれまでだが、あまりに無能すぎることがある。宇宙人の脅威に直面して狼狽えてしまう人もいると思うが、21世紀のSFエンタメとしては下の下だろう。フィクションのリアリティを求めていくためには、予算が無くても配慮できることはあると思う。まずは事に関わるキャラ設定が重要だろう。地球人側も宇宙人側もだ。

地球人類が攻める側は今のところ考えていないが、地球人類が太陽系外に進出する作品(特に大作)では平和の使者となっているものが多いと思う。宇宙人を場合に短絡的に悪として描く場合と比較してみるに、地球人類の未来の姿について楽観的に過ぎる感が否めない。『ハイブマインド・クロニクル』の地球人類の未来は分派させる予定だが、その一つに他種族への侵攻を目論む勢力を盛り込んでみるのも面白いかもしれないと今これを書いていて思いついてしまった。さすがに、そのまま宇宙制覇物語を書くというわけにはいかないが、宇宙人に平和志向の者がいても不思議ではないように、地球人に悪しき野望を抱く者がいても当然だろう。地球内では長き歴史の中で証明されていることだからね。

『ハイクロ』では地球人類が簡単に踏み潰されないようには書いていくつもりではあるので、そのへんのディテールの中で活かせるように考えてみるのは作品全体にとって良いフレーバーになるかもしれない。ほろ苦い味かもしれないが、年代記的には美味そうではある。地球人類をイレギュラーとして描くなら、ポジティブ面だけじゃなくてネガティブ面も取り入れるというのが乙と言えるのだろう。